2010年01月17日

「春にして君を離れ」アガサ・クリスティー

ひえ〜〜!こっち休んでいる間に始めたミーハーブログの記事を、こっちにアップしてしまいました〜。「あれ、無いな〜」と思っていたら「毒チョコ」にあって、超絶恥ずかしいわたくしでした。というわけで、1/12の記事は削除しました。ちなみに某所でも社会啓蒙活動やってます。

さて気を取り直して久々の書評です。アガサクリスティの「春にして君を離れ」です。


春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/04/16
  • メディア: 文庫




これはミステリーの形式をとりつつも、探偵小説ではありません。ラブストーリーなんていう人もいるけど、私にとってはホラーです。読み終わって薄ら寒くなりました。解説で栗本薫さんが「哀しい小説であり恐い小説だ」と書いていましたが、まさにそうでした。

秀逸です。あまりに面白いので一気に読んでしまいました。

いわゆる勘違い女が主人公です。自己愛が強く、自己満足的で周囲に自分の意見を押しつける主婦です。彼女は弁護士の妻でプライドが高く、周囲の人間をどこか見下している女です。ゆえに家族とも軋轢があります。そんな自分の本性に気づかず、自分では周りの世話を焼いて苦労していると思っている、勘違い女。

娘夫婦のいるバグダッドを訪れた際、主人公は女学校以来の同級生としばらくぶりに偶然再会します。主人公が裕福な奥方に収まった一方、級友は身を持ち崩して落ちぶれています。級友を見下す主人公と、鼻持ちならない彼女に対して辛辣な口をきく級友。
イラク暮らしの級友は、主人公の娘が母親に反発していたこと、主人公の夫が浮気をしていたことを示唆します。自己満足的で、都合の悪いことには蓋をしがちな主人公の心は、級友によって風穴を開けられます。そして、国へ帰る列車が途中で立ち往生した数日間、主人公は自分を内省し、真実に気づき始めます。

ホラー作家のスティーブン・キングが、単に怪奇の描写だけではなく、人間模様も描いていたように、クリスティーの人物描写も巧みです。単なる謎解きに終始していません。勘違い女の一人称を、彼女の独りよがりな目線で描いています。彼女の目線に立ちつつも、読者には彼女への反感を抱かせる巧さがあります。脇役も絶妙。勘違い女にかぎって、穏和で賢明な夫がいたりして、物語に皮肉のスパイスを振りかけています。夫が密かに思いを寄せるのが、主人公とは対照的な純粋で明るい女性というのもうなずけます。

勘違い女が自分では意識せずに、周りの人間を害しているという作品は、後世の日本の作品にも見られますよね。湊かなえの「贖罪」とか。こういうジャンルを最初に書いたのが、もしかしたらクリスティーなのかなと思いました。

栗本さん同様、私の周りにも勘違い女がいるので、余計に感情移入をしちゃったんですよね。


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posted by 館主 at 14:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 読む/文芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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