2006年04月05日

英国紅茶よもやま話-出口保夫の薀蓄

酒も煙草も嗜まない私は紅茶、もといティータイムをこよなく愛す。夜出歩くのも疲れるし、居酒屋ときたら煙いしで、酒にまつわる文化に世間の他の大人と違って興味無しなのだ。このまま、酒の美味さをわからずに生を終えていきそうである。

昼下がりに瀟洒なパーラーで、美味しい紅茶かコーヒーとお菓子を楽しみながら、友達とおしゃべりする方がよほど素敵ではないか? 以前からイギリス通としての出口先生の著書には注目しており、今回紅茶に関する彼のこだわりを書いた「人生の午後の紅茶」が出たので、思わず手にとってしまった。

出口先生は早大の英文学の教授であり、在英経験もある知英派だ。シェークスピアらの作品を翻訳している人でもある。キャラ的にはリンボウ先生とかぶっているが、あちらは慶応の日文の先生だ。数年来出版された、自称・他称英国通の英国礼賛本の中には、このおばさんの本のように、眉に多量の唾を付けてしまうものもあるが、出口先生の本は若干エリート風を吹かせているものの、別段鼻につくスノッブさはない。

周知のとおりイギリスの食文化は貧相だ。私自身滞在していた頃、料理屋で幸福な思いをしたことは数えるほどもない。料理としての食はお粗末だったが、チーズと紅茶のバラエティは豊かだった。日本ではお目にかからない珍しい種類の紅茶やチーズを買って、飲み比べや食べ比べをするのが楽しかった。その時の経験を、過去のフレーバーティに関する記事で書いたので、良かったら読んで欲しい。

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彼が英国で体験した紅茶体験には、私が体験したものと共通することあった。特にオープン・ガーデンでのティータイムには、懐かしい思いになった。園芸に凝った英国人が、自慢の庭を花の盛りの時期に一般開放し、遊びに来た近所の人に紅茶とクッキーを振舞うという、素敵な習慣が向こうにはある。私は、去年の5月に訪れた見事なバラ蔓のからまる家と主である好々爺を思い出した。この時の模様は過去記事「英国式ガーデニングのある家」と「英国式ガーデニングのある家2」に書いた。

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↑私が英国滞在中に訪れた民家。別館「英国茶館」に掲示。


また、出口先生は店でいただくアフターヌーンティーの愉しみについても書いている。彼の定宿コンプリート・アングラーホテルや東京の椿山荘(フォーシーズンズ・ホテル)が出す、アフターヌーンティーはさぞ素晴らしいことだろう。ちなみにロンドンのフォーシーズンズ・ホテルもアフターヌーンティーで有名だ。私はそんな高級店には行けなかったが、小さな村の喫茶店でスコーンとミルクティーを食べたことがある(その時の模様は「イギリス東部の田舎で午後ティーを愉しむ」)。
クロテッドクリームとバター、ジャムを塗ったスコーンと、たっぷりのミルクティーをいただくのは幸せな瞬間だった。クロテッドクリームが我が国の一般的なスーパーに無いのは残念だ。出口先生も指摘されているが、向こうの喫茶店が出す紅茶は日本のそれみたいにケチケチしていない。日本ではお目にかからないような大きなティーポットに、たっぷりのリーフとお湯を注いでくれ、おかわりもできる。ティーポットには厚手のティーコージーをかぶせるので、温度も下がりにくい。

また、紅茶にレモンスライスを入れることや、お店がミルクティー用に温めたミルクを出すことが、日本ならではの邪道の習慣であることも先生は指摘する。そうそう、そうなんだよね。何でだろう?と思っていたら、先生曰く温かいミルクは紅茶を乳臭くするのだそうで、「ほんまかいな?」と思った(笑)。


この本で紅茶の銘柄、茶器、女王陛下の紅茶など、出口先生は幅広い紅茶の知識を披露する。某イギリス本のように奇をてらったことは何一つ書いていない、淡々としたこの本が気に入った。


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posted by 館主 at 19:29 | TrackBack(0) | 読む/新書・随筆 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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