私も大学時代に受験したことのあるこのテスト、今年の3月に試験形式が変わったそうだ。この変更前に、慣れた旧試験方式でテストを受けようと、一時受験者が殺到したということも小耳に挟んだ。
「ふーん」と思っていたら、最近、変更箇所の一つを聞いて驚いた。「何もそこまでする必要があるのか?」と思った。
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新テストのリスニングテストには、米国・英国・カナダ・オーストラリアの4種類の発音が含まれるようになったのだそうだ。各発音の比率は、平等に25%ずつということだ。
言うまでもなく英語は国によってアクセントが異なる。日本人の中には、英語の発音はどこの国でも皆同じだと勘違いしている人がいたのだが、私はそのことに驚いた。狭い日本の大阪と東京だってアクセントが違うのに、大西洋を挟んで位置している米国と英国の発音が、同じであるわけがない。
これまでは米語が世界標準だったので、イギリスのIELTSは抜かして、ほぼすべての英語検定はアメリカ英語を基準にしたものだった。結論から言うと、私は従来どおりで良いと思う。ゆえにTOEICの新方式には反対だ。
イギリス英語は、スタッカートを切るようなしゃべり方で、鼻にかかった感じにも聞こえる。日本と同じで、狭い島国の中にいろいろな訛りがあって、北部のスコットランドまで行くと、他の英語圏-例えばオーストラリアの人でもわからないようなアクセントで、現地の人々はしゃべる。まあ、そんな極端な例は試験には出さないが、米語と英語は違うのだ。
私にはイギリス滞在経験があるが、だからと言ってクイーンズイングリッシュを贔屓しているというわけではない。英語の世界標準は北米英語だと思っている。下流階級のアメリカ人の話す英語は、かつぜつがハッキリしていないが、それでもTVや映画の影響で、米語は聴き取りやすい。中上流階級の人のしゃべる米語はきれいで聴き取りやすい。また、南部訛りはともかくとして、全米各地の発音が著しく異なるということはない。
中国でも標準北京語が標準語であるように、英語の発音も北米発音をスタンダードにすれば良いのである。その方が学習者も的を絞りやすい。「他国の英語を差別するな」という地球市民的な発想で、今回の改訂はなされたのであろうか? 私に言わせたらそんなものは悪平等である。
考えてみればいい。日本語検定で「地方の特色も大切にしよう!」なぞと、地球市民的な発想で、ヒヤリングに関西訛りや東北訛りを出したら、外国人受験者は混乱するだろう。
「ちょっと、オッチャンこれナンボ?」という音声に対して、受験者は「『オッチャン』とは『おじさん』のことだな」とまでは理解できても、「『これナンボ』? 『これ何本?』」と勘違いしてしまうかもしれない。こんな聴き取りテストは迷惑千番なテストである。
オーストラリア人だって、よそで英語をしゃべる時は、努めてオージー訛りを出さないようにしてしゃべっている。ちょうど、日本の地方在住の人間が、県外では完璧ではないにしても、標準語もどきのような言葉を話そうとするのと同様のことである。
通訳学校ではシングリッシュやインド訛りにも対応できるように教えているが、一般の英語学習者にそんなレベルは必要ない。大事なのは共通のツールを使うことである。
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