イラストレーター、リリー・フランキーの自伝エッセイ(!?)である。ジャンルとしては『随筆』にあたるのかもしれないけど、文芸的な要素が多いと私は感じるので、当ブログでは『文芸』カテに入れさせてもらった。
流行りもの、ですな。普通に面白かった。ベストセラーみたいだけど、わざわざお金出して買いたいとまでは思わない。私は、これ、図書館でたまたま目が合ったから借りた。紹介文はアマゾンより引用↓
読みやすさ、ユーモア、強烈な感動! 同時代の我らが天才リリー・フランキーが骨身に沁みるように綴る、母と子、父と子、友情。この普遍的な、そして、いま語りづらいことがまっすぐリアルに胸に届く、新たなる「国民的名作」。『en-taxi』連載、著者初の長編小説がついに単行本化。
作者のリリー・フランキーについてまず、言及する。最初に彼の名前を見かけたのは、マガジン・ハウスの『an・an』紙上のコラムだった。キョンキョンだの林真理子だのといった、『お洒落な文化人』が担当するアレ、である。よって、彼の位置づけもそんな人、別の言い方をすると『タレントまがいの文化人』といったところだった。
次に彼と再会したのは、FMラジオの深夜放送だった。深夜ラジオにありがちな、下ネタ有りの濃ゆーい話を、胡散臭いオッサンとグラビアアイドルのおねーさんと、3人で展開していた。うーん、『色もの』的位置づけでもあるのか?と思った。
よくわからん立ち位置の人だったが、文才のある人であることは感じ取られた。そしてその内容には共感できる面もあった。例えば『an・an』で連載していたコラムの、ある回では、不倫の恋に対して批判的なコメントを寄せていた。ああいう独身のスノッブな女が読んでそうな雑誌で、そういう発言をするのはNGかもしれない。当人も、「女性誌でそういう発言はタブーかもしれないが」と前置きしつつ、「でもやっぱり男の90%は遊びのつもりなんだよ」と、男の側の本音を暴露した。言うなれば「よそのうちのペットを可愛がるが、自分では飼わないという、美味しいとこ取りと同じ」だと喩える。実に良心的な論客だ、と思った(^^)
「東京タワー」でも、彼の比喩表現の巧さが存分に発揮されていた。
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特に、彼のチンピラな父親が、一級建築士の肩書きを勝手に名乗っていた時の比喩表現が、極めて淡々としているだけに、笑えた。「……だがオトンが一級建築士を取った形跡はない。きっと子供の肩たたき券のように、自分で自分に発行したのだろう」
リリー・フランキーの文章を一回でも読んだことのある人なら、彼が比喩表現の巧い人であることを知っているだろう。
アマゾンが言うとおり、「東京タワー」は読みやすい本だった。だが『国民的名作』とまでは思わない(厳)。島田洋七の「佐賀のがばいばあさん」と同じくらいの面白さだ。
思うに、人には誰にでも、家族をめぐる愛憎劇があって、それを詳しく紹介すれば、一つの物語になるのだろう。それがたまたまリリー・フランキーや島田洋七という有名人が書いたものだったから、脚光を浴びたのだ(なんて、当たり前かつ穿ったことを書いてしまう)。
それにしても、リリーさんって40代で独身なのだそうだが。これだけ母への熱烈な愛情と尊敬をうたわれると、到底結婚なんかできなさそうに思えてしまう。私が女としての立場から見ると、「お母さんには勝てないどころか、近いレベルにも達せません」と及び腰になってしまう。
恐るべきマザコン小説、なのかもしれない。
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