前回の文芸評で取り上げた「六番目の小夜子」の方が断然面白かった。直木賞受賞作品って必ずしも面白いとは限らない。話題性とか業界でのうんぬんかんぬんとかの関係でノミネートされるものだから。それでも共感するのは、やっぱり同年代の女性が奮闘する話だからかな。
中堅保険会社に勤める5人のOL。条件のよい結婚に策略を巡らす美人のリサ。家事能力ゼロで結婚に失敗する紀子。有能なOLでありながら会社を辞めざるをえなくなったみどり。自分の城を持つことに邁進するいきおくれの康子。そして得意の英語で自立をめざす紗織。男性優位社会の中で、踏まれても虐げられても逞しく人生を切り開いていこうとする女たち。それぞれの選択と闘いを描く痛快長編。直木賞受賞作品。 アマゾンの紹介文より今年はめでたい年で、当方の妹と彼女と同年齢の従妹が二十代後半にして結婚する。私などは先を越されてしまった(爆)。
ともかく、二人の婚約者選びの違いが、二人の歩んできた人生の違いを表していて、思わずうなってしまう。わりと余裕のある家の娘である従妹、Rちゃんの選んだ人は母子家庭に育った高卒の雇われ床屋だ。母親は寡婦ではなく、結婚せずに子供産んだらしく、彼は実質的には伯母に育てられた。Rちゃんは東京のお坊ちゃん大学を出た後、某大手企業に転職してバリバリキャリアウーマンをやっている。自らの職業に対等な男を選ぼうとは微塵も考えず、自分と相性の合う人を選んだ。彼女は、世の若い女性ならほぼ誰でも少しはこだわる、肩書きやブランドには
まったくこだわらない。彼の肩書きが肩書きであるだけに、公務員でPTA会長も務めた経験のある彼女の父親は、最初は結婚に反対していた。だが二人の熱意に最後は折れた。
一方、家が貧乏して苦労した妹の選んだ人は、一流大学卒で上場企業に勤めるサラリーマンだ。
貧乏暮らしをするということがどういうことか、骨身にしみてわかっているので、彼女は超エリートとまではいかなくても、そこそこ良いレベルの男性を選んだ。貧乏にも耐えられた私と違い、妹は短大を出るとすぐに勤めに出た人だ。婚約者の親は県庁職員で、兄弟も一流大学卒の一部上場企業社員だ。「うちの方が負けてるじゃん。良いのかな、こんなうちで」と家族で言っていた(笑)。
「あいつは絶対肩書きにはこだわるよな」と、昔から弟と言っていた。「職業に貴賎は無い」なんて奇麗事は、他人事なら言えるけど、やっぱり自分の妹のことともなると、できれば条件の良い人と結婚してほしいと思う。
世の中、理想だけでは飯は食えない。女の人生はジハードだ。同作品に出てくるリサのような玉の輿狙いの女の子の気持ち、フェミニズム思想にかぶれていた昔の青い私は反発していたけれど、今だったらわかる。理想だけで飯が食えるのは、苦労知らずのお嬢様だけだ。
母は、自分の妹の子、姪の結婚についてなかなかシビアな意見を吐く。「でもSさん(従妹の婚約者)ちは母子家庭なんだから、しょうがないじゃない」と私が言うと、「そんな人は世の中に掃いて捨てるほどいる」と母は返す。「片親でも大学を出て立派になった人もいる。片親だからといって甲斐性がない男になっても良いという理由は無い」と返す。Rちゃんは彼の稼ぎが少ない分、自分が頑張って稼げば良いと言う。「えらい」と言う私の言葉に、母は「そんなんじゃだめだ」と反論する。「苦労を知らないからそんな結婚をするのだ」と母は言う。
世知辛いようだけど、私は母の言い分もわかるのだ。やっぱり結婚は女の人生を決める。近所に母と同年齢の独身女性がいるのだけど、会社をリストラされた彼女は、単純労働のパートをしている。自分よりも何十才も若いリーダーに叱られながら、毎日働いている。一方の母はというと、日がな一日ソファに腰掛け読書三昧だ。亭主への文句や日頃の愚痴を言いながら暮らしている。近所のおばさん自体は今の生活に満足しているので、精神面では愚痴だらけの母よりは幸せなのだけど、ハタから見ると差を感じてしまう。失礼だけど。
悪いこと言わんから堅実な結婚をしなさいな。と私は今の若い女の子たちに、老婆心ながらアドバイスをしたい。自立とか総合職で働くことも立派だけど、現実は大変だって。それは今働いていて私自身が感じることだよ。(ああ、なんかちょっと書評からはずれちゃったかな?)
追記:一部誤解を招く記述がありましたので、補足致します。「床屋のフィアンセ氏が甲斐性がない」という発言は、過去のカップルの軌跡に起因しております。彼は以前、私の従妹にフラレました。というのも地元に帰って叔母夫婦に依存して生活しようとしていたからです。この度結婚することになったのは、彼が考え直して戻ってきたからです。
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